ガーゼ

大人になっても少女で痛いの

壊れたものはもう要らない

壊れたものはもう要らない。どこか遠くに棄ててしまおう。重たい身体を持ち上げる力は無くなってきてしまったよ。ほんとうにもうただ眠りたいんだ。指先は浮腫んで、関節も曲がらなくなった。利き手が使えない画家だなんて。身体が動かない舞踏家だなんて。

あなたが、寂しそうと勘違いをして。わたしはまた神経を切り落としながら歩いてゆく。

向こう側に。歩いてゆくんだ。

黒髪

今度会えるときがあったらカミソリを忘れないで

色素の濃い瞳孔を覚えている。点滴の痣を沢山作ったときにあなたの腕を思い出した。わたしはとても嬉しくなりたかった。16の夏に帰る場所を探して果てしない道路に寝そべった。コンクリートと鉄の錆びるにおい。自己不全の真夜中にくるまって寒い寒いと呟いて。あなたの動かない瞳孔と弛緩した口元を見つめながらわたしは幸せだと感じた。赤いのを吐き出しながらわたしは幸せだと感じた。わたしの右目もなにも見ていない。あなたの長い黒髪がわたしを縛って離さなかった。青白い顔色に安心を求め続けた。重荷だったでしょうに。ご免なさい。たくさんのアンプルを割ってあなたの悲しむ顔が見たかったんです。絶望してわたしを蔑む顔を。2年前に遠くに行ってしまったって聞きました。今度会えるときが来たらカミソリを忘れないで。

ガーゼ

自己の内面をみている

自分がどうゆうものかわたしは知らないから知りたい欲求か。わたしは生まれてからずっと共感を避けている。空気感に過敏なせいで音に過敏過ぎるせいで一人きりでしか生きていけない。ホルモンだとかそんなことで内側が知れるのなら楽な事ですね。全てに影響されて体調が変化してしまう。一人きりで居なければ。そう思っては失踪と放浪を繰り返す。帰るところなどどこにも無かったのだ。十代の頃は疾走していた。太く短く生きなければと速さばかりを求めて死に急いで。温度など感じなくなってしまった。感覚はもうない。加速の先に身体は凍り付いている。

あなたを赦すわたしがいることで全てが減速していく。わたしはわたしを赦せずに真昼の病院でわたしを棄てた。

一心に柩を運ぶ。閃光がさす屋上。

そこには網目がめぐらされ。

網目の先に幾つもの棟が見えている。