ガーゼ

大人になっても少女で痛いの

黒髪

今度会えるときがあったらカミソリを忘れないで

色素の濃い瞳孔を覚えている。点滴の痣を沢山作ったときにあなたの腕を思い出した。わたしはとても嬉しくなりたかった。16の夏に帰る場所を探して果てしない道路に寝そべった。コンクリートと鉄の錆びるにおい。自己不全の真夜中にくるまって寒い寒いと呟いて。あなたの動かない瞳孔と弛緩した口元を見つめながらわたしは幸せだと感じた。赤いのを吐き出しながらわたしは幸せだと感じた。わたしの右目もなにも見ていない。あなたの長い黒髪がわたしを縛って離さなかった。青白い顔色に安心を求め続けた。重荷だったでしょうに。ご免なさい。たくさんのアンプルを割ってあなたの悲しむ顔が見たかったんです。絶望してわたしを蔑む顔を。2年前に遠くに行ってしまったって聞きました。今度会えるときが来たらカミソリを忘れないで。